急性肺傷害とARDS
急性肺傷害とARDS
ACUTE LUNG INJURY/ADULT RESPIRATORY DISTRESS SYNDROME
The Proceedings of the American Thoracic Society Volume 2, Issue 3 2005
1.Ventilator-induced Lung Injury : Role of Protein-Protein Interaction in Mechanosensation
細胞に対する機械的力の生化学的刺激への変換
細胞が生理学的な力を受けた場合には細胞膜のMechanosensorsを介するほか、その生理学的な力はProtein-Protein Interactionactinにより細胞内の生化学反応に変換される。そのProteinの一つであるfilament-associated protein (AFAP) はアクチンフィラメントに沿う細胞骨格関連蛋白である。もう一つのProteinであるtyrosine kinase c-Srcは細胞質内に存在し、生化学反応にて細胞機能を促す。すなわち、機械的力は細胞骨格の変形を起こし、それに連続するAFAPはc-Srcと接合 することで、c-Srcは活性化され生化学反応を促す。
PBEF (Pre-B-cell colony-enhancing factor)と急性肺障害
急性肺障害患者のBALや血清のPBEF蛋白質は増加した。
3.Genetic Determinants and Ethnic Disparities in Sepsis-associated Acute Lung Injury
敗血症に伴う急性肺障害の発症は人種により差があるか
TABLE Ethnic differences in allelic frequencies of ali candidate genes
ALI = acute lung injury; AOAH = acyloxyacyl hydrolase (Acc. #P28039); AQP1 = aquaporin 1 (Acc. #NP_932766); CD14 = monocyte differentiation antigen CD14 (Acc. #NP_000582); IL-6 = interleukin 6 (Acc. #NP_000591); MIF = macrophage migration inhibitory factor (Acc. #P14174); MLCK = myosin light chain kinase (Acc. #NP_149109); PAI1 = plasminogen activator inhibitor-1 (Acc. #NP_000593); PBEF = pre-iB cell enhancing factor (Acc. #A55927); TSP1 = thrombospondin 1
敗血症に伴う急性肺障害の発症と死亡率が人種間で異なるのは、急性肺障害関連遺伝子多型によると推察される。
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4.Effects of Hypoxia on the Alveolar Epithelium
低酸素血症は肺胞上皮の Na輸送を障害する
低酸素はtranscription factorであるhypoxia inducible factor (HIF)による遺伝子制御にて、肺胞上皮にvascular endothelial grouth factor (VEGF)を発現させて、血管新生を促し酸素供給を改善させる。この機序と解糖系亢進は肺胞上皮が低酸素に対してATP産生を維持し細胞死を防ぐメカニ ズムである。
また、肺胞内のNaは図に示すように、肺胞上皮のapicalのNa+チャンネルからbasalのNa,K-ATPaseを通って吸収されるが、急性の低酸素はhypoxic pulmonary vasoconstrictionを引き起こすほか、肺胞上皮のNa輸送を障害し、肺胞浮腫の原因となる。肺胞浮腫はさらにガス交換を妨げる。
A549 細胞を1.5%の低酸素に暴露するとNa,K-ATPase活性は低下した(a)。実線で示すbasolateral membraneのNa,K-ATPase α1サブユニットは低下するが、破線で示すcell lysateのNa,K-ATPase α1サブユニットは低酸素で変化しなかった(b)。
低酸素によるNa,K-ATPase活性の低下は酸素の再暴露にて回復した(c)。また、basolateral membrane (BLM)のNa,K-ATPase α1サブユニットも酸素の再暴露にて回復した(d)。
Na,K-ATPase 分子は低酸素によりBLMからcytosolにendocytosisをおこした(e)。
このメカニズムとして、低酸素刺激はミトコンドリアの活性酸素を増加させ、Na,K-ATPase α1サブユニットのリン酸化を引き起こすことが考えられた。
5. Alveolar Epithelium: Role in Lung Fluid Balance and Acute Lung Injury
ARDSにおける肺胞内液 のクリアランスの低下は予後を悪くする
以前は肺胞内の体液の貯留はStarlingの法則によると考えられていたが、能動的な電解質の輸送が浸透圧による水分輸送に打ち勝つことが明らか となった。
急性肺障害あるいはARDSの人工呼吸管理79例の気管内挿管後の肺胞内浮腫液の蛋白質の変化率から肺胞液クリアランスを算出した。肺胞内浮腫液の蛋白質濃度は2回の測定により血清蛋白質濃度より増加しており、肺胞液クリアランスは能動的な電解質の輸送によることが理解される。
3%/h未満をimpaired、3-14%/hをsubmaximal、14%以上をmaximalとした。肺胞液クリアランスは性別、喫煙、敗血症の 有無によって異なった。3群間に、ステロイド剤、beta刺激薬などの治療薬やtidal volume、PEEFに有意差はなかった。
肺胞液クリアランスが最も増加した群が有意に予後が良かった。